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開発の現場からvol.10「スバル アイサイト・ツーリングアシスト」

開発現場から聞こえてきたリアルな声から、現代の自動車が抱える問題のヒントや未来への展望を伺う。
今回は、スバルの看板技術であるアイサイトに追加される新機能ツーリングアシストの詳細とその開発に携わったエンジニアの声から、開発の裏側をお伝えする。

高速道路における全車速域でのステアリング制御を実現したスバルの開発者に聞く 2017.6.29

国が主導するプロジェクトによる公道実証実験が本格化するなど、ますます加速する自動運転技術の開発。とはいえ、法整備や事故を起こしたときの責任の所在についてなど、まだまだ自動運転に関しては道半ばであり、現状において各自動車メーカーは、ドライバーが運転に関与し、責任を持つことを前提に、事故リスクを小さくし、運転操作による負担を軽減する方向の技術を推し進めている。

自動運転技術を積極的に開発しているメーカーのひとつであるスバルは、この度実施した報道陣向けイベントにて、2017年夏に登場予定の新型レヴォーグおよびWRX S4の姿をいち早く公開するとともに、新たに採用されるアイサイトの新機能であるツーリングアシストの体験試乗会を実施した。ツーリングアシストは、高速道路の渋滞時を含む全車速域でアクセル、ブレーキに加えてステアリングを制御することで、ドライバーの負荷を軽減する。まさに、自動運転技術を応用した運転支援システムである。

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ステアリング制御を含めた高度な運転支援を行うアイサイト・ツーリングサポート
Photo: スバル

進化のポイントは、ステアリング制御による「車線中央維持」の作動領域を従来の「60km/h以上〜100km/h」から「0km/h以上〜120km/h」へと拡大するとともに、「先行車追従操舵」を追加し、「全車速域追従機能付きクルーズコントロール」と組み合わせたこと。アイサイトといえば、国産メーカーとして初めて自動停止まで行うことで、衝突被害軽減ブレーキ普及の立役者となったテクノロジーで、現在ではアイサイトver3へと進化し、クルマに加えて歩行者、自転車を識別し、対象との距離や移動速度を認識できるようになった。その技術的な核となっているのが、2台のカメラを使っての画像認識技術。今回の進化も、ハードウェアはそのままに、ソフトウェアを改良することによって実現している。

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アイサイト・ツーリングアシストの画像認識の技術を担当した第一技術本部先進安全設計部の田村悠一郎さん

 

お話を伺ったのは、アイサイト・ツーリングアシストの開発において、核となる画像認識の技術を担当した第一技術本部先進安全設計部の田村悠一郎さん。
「私が2008年に現在の部署に入った当時、白線を認識してステアリングを制御する技術はまだ確立していませんでした。しかし、当時からステアリングの制御ができるようになれば、ドライバーの負担を減らすことができるという議論はありました。渋滞などに巻き込まれるのが嫌でロングドライブに出かけなかったドライバーや、家族サービスのために出かけるお父さんたちをサポートしたい。そういう気持ちで開発を続け、そろそろ10年が経ちますが、ようやくほとんどの高速道路をカバーできるようになりました。開発チームとしては、実際に“使える”機能でなければ意味がないという意識で、リアルワールドの幅広いシーンで安定して作動するべく、世界各国の道路を天候も含めて調査し、解析しました。従来のステアリング制御は、白線を認識することで車線内をキープしていましたが、渋滞などで先行車との車間距離が近くなると、カメラが白線を認識できなくなり、車線維持のためのステアリング制御は行えませんでした。そこで、今回のツーリングアシストでは、白線が見えなくなった場合には先行車を認識してそれを追従するよう、画像認識技術を磨き上げ、制御を改良しました。それによって、白線が消えている場合や、工事による規制などで車線がなくなるようなイレギュラーな状況でも、安定して先行車を追従するようになりました。新しいアイサイトは、より運転が楽しく、安全なものになったと自負しています」
高価なレーダーを使わず、画像認識技術を磨き上げることで、幅広い車種に先進技術を展開しているスバル。それを支えているのは、ドライバー目線で行われる、スバル開発陣の地道で誠実な仕事であった。