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開発の現場から vol.9 スバル「新型スバル インプレッサ・XV」

開発現場から聞こえてきたリアルな声から、現代の自動車が抱える問題のヒントや未来への展望を伺う。

今回は、JNCAPにおいて過去最高の得点を獲得し、2016年度「衝突安全評価大賞」を受賞。さらに創設以来初めてとなる「衝突安全性能評価特別賞」を受賞したスバル 新型インプレッサおよびXVについて、開発の裏側をお伝えする。

衝突安全評価大賞を受賞した新型スバル インプレッサ・XVの開発者に聞く 2017.6.6

かつて、自動車の安全はお金がかかるというのが定説だった。ボディが大きく車両価格の高い高級車ほど、安全装備が充実して、車体構造も頑丈だったからだ。
しかし、そんな常識を覆すクルマが登場した。スバルのコンパクトカー、新型インプレッサおよびXVである。この2モデルが、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施した2016年度JNCAP予防安全性能アセスメントにおいて「乗員保護性能評価」95.02点(満点100点)、「歩行者保護性能評価」96.07点(満点100点)、「シートベルトリマインダー評価」8.0点(満点8点)という過去最高の得点を獲得し、2016年度「衝突安全評価大賞」を受賞。さらに創設以来初めてとなる「衝突安全性能評価特別賞」を受賞したのである。

新型インプレッサは全長約4.5m、車両価格はベーシックなモデルでは200万円を切る車両も設定されている。スバル独自の衝突被害軽減ブレーキ機構である「アイサイト」装着モデルはそれよりも高くなるが、それでも216万円からとけっして高額なクルマではない。にも関わらず、2016年度にテストを行ったクルマのなかで最高評価を獲得したというのは、非常に驚くべき結果だと言えるだろう。

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スバルは、新型インプレッサとXVが2016年度「衝突安全評価大賞」を受賞したことを受け、報道関係者向けに衝突実験の模様を披露するイベントを開催した。衝突実験の模様が公開されることは稀であるが、それだけスバルが新型モデルの安全性に自信を持っているという証拠でもある。

公開されたのは、時速65km(JNCAPでは時速64km)まで加速させた試験車を、アルミハニカム製の障害物にオフセットさせた状態で前面衝突させる「オフセット前面衝突試験」、そして新型インプレッサおよびXVに標準装備される歩行者用エアバッグの展開試験。
「オフセット前面衝突試験」で明らかになるのは、車体構造の堅牢性と乗員保護が適切であるかどうか。実験を主導したスバル第一技術本部 車両研究実験第2部 部長 古川寿也さんは、衝突後の実験車両に近づくと、軽々と運転席のドアを開けて見せた。キャビンの変形が最小限に抑えられているというアピールだ。

「スバルは、新中期経営ビジョン『際立とう2020』において、安全について全方位ですべての乗員、歩行者を守る総合安全ブランドナンバー1を目指すことを宣言しました。今回、インプレッサおよびXVは新しいプラットフォームを採用していますが、これは2025年まで通用する進歩的な内容となっています。従来のプラットフォームに比べて、骨格を前方から後方までスムーズに流れる形状とすることで、衝突のエネルギーが分散され、乗員をしっかりと守ります」と古川さん。

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歩行者用エアバッグのセンサーについて説明する古川さん。

 

そして、高い「歩行者保護性能評価」に直結した標準装備の歩行者用エアバッグについても、実際にエアバッグを展開する試験を実施し、有用性をアピールした。
開発に携わった第一技術本部 車両研究実験第二部 車両研究実験第三課 橋本善之さんは、この画期的な装備がどの様にして採用に至ったのかを教えてくれた。
「展開した歩行者用エアバッグを見ていただくとわかりやすいのですが、膨らんだバッグはボンネット後端に加えてAピラーを覆う形となっています。これは、歩行者の頭部がAピラーと衝突した際のダメージを軽減することが目的となっています。これまでの改良によってバンパーやボンネット側の対応は進み、かなりのレベルまで到達していました。しかし、Aピラーの部分をなんとかしなければ、これ以上の歩行者保護は難しい。そこで、歩行者用エアバッグの開発を進めていたのですが、他メーカーのようにボンネットを開かせそこからエアバッグを展開する方式ですと火薬の数が3つ必要で、どうしてもコスト的に実現が難しい。そこで色々と試行を重ね、ボンネットとフロントガラスの隙間からエアバッグを展開させる現在のシステムにたどり着きました。これなら火薬の数は1つで済むため、非常にシンプルかつ低コストで歩行者用エアバッグが実現できたのです」

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歩行者用エアバッグの開発に携わった第一技術本部 車両研究実験第二部 車両研究実験第三課 橋本善之さん。

 

新型XVの開発責任者を務めた井上正彦プロジェクトゼネラルマネージャーは、スバルのクルマ作りについてこう語った。
「今回の歩行者用エアバッグは、開発にあたったエンジニアたちも非常に努力していいものを作ってくれましたが、生産部門などの協力なしには実現できませんでした。わずかな隙間に機構を入れるわけですから、配線の取りまわしなど組み立てにも負担がかかります。しかし、スバルではこういう難しいものを作りたいと言った時に、駄目と言わずに協力してくれる風土があるんです」

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新型XVの開発責任者を務めた井上正彦プロジェクトゼネラルマネージャー。

 

設計、実験、生産が一体となって、目標の達成に向かったことで、新型インプレッサおよびXVが2016年度「衝突安全評価大賞」を受賞できたと語る井上さん。安心で楽しいクルマをより多くのひとに届けるために。チームの力が最高の結果を呼び寄せた。