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開発の現場から vol.7 トヨタ「新型トヨタ ヴィッツ」

開発現場から聞こえてきたリアルな声から、現代の自動車が抱える問題のヒントや未来への展望を伺う。

今回は、トヨタが発表した新型ヴィッツについて、ハイブリッドだけではない本質的な進化を支えた組織改革についてお伝えする。

新型ヴィッツに見るトヨタ組織改革の効能 2017.2.27

ヴィッツが元気だ。トヨタが18年ぶりに復帰したWRC(世界ラリー選手権)では、ヴィッツの欧州市場向けの名称であるヤリス(TOYOTA GAZOO Racing)が参戦2戦目にして早くも勝利を挙げ、2017年1月12日にマイナーチェンジされた市販モデルにも待望のハイブリッドを追加するなど、話題をさらっている。

先日開催されたメディア向け試乗会にて、新型トヨタ ヴィッツを体験する機会が与えられたが、34.4kmの低燃費で話題のハイブリッド以外にも、走りの性能がずいぶんと進化していることが確認できた。
現行型ヴィッツのデビューは2010年のことで、今回のマイナーチェンジは2014年4月に続く2回目となる。今回のマイナーチェンジでは、クルマの基本性能を支えるボディ剛性にまつわる改良点が多く見受けられた。ドア開口部を中心としたボディへのスポット溶接の打点増に加えて、インパネ内部にある骨格の補強、フロンドウインドウの接着剤変更もそうだ。さらに、WRCカーの開発で培ったノウハウを前後フェンダー内に注入することで空力性能も強化。サスペンションもショックアブソーバーのバルブを新構造とすることで、乗り心地と操縦安定性の両立レベルを引き上げたという。
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WRC第2戦フィンランドで優勝したヤリスWRC

 

トヨタ小型車戦略の舵取りをするプレジデントの宮内氏が語る
カンパニー制導入のねらいとその効用

試乗会にともなって実施されたプレゼンテーションでは、「Toyota Compact Car Company」プレジデントの宮内一公氏も登壇。新しいヴィッツが開発された背景について説明を行った。

トヨタでは、2016年4月に新体制へと移行。ビジネスユニットを従来の機能を軸としたものから、製品を軸とした7つの「カンパニー」を設置している。そのねらいは、組織間の調整にまつわる煩雑さを減らすことで、よりスピーディにトヨタが目標に掲げている「もっといいクルマづくり」と「人材育成」を促進していくことにあるという。

トヨタ自動車が導入した7つのカンパニー

「先進技術開発カンパニー」
「Toyota Compact Company」
 ヴィッツやアクアといった小型車を担当。トヨタ自動車東日本が参画
「Mid-size Vehicle Company」
 クラウンなど主力乗用車を担当
「CV Company」
 商用車を担当。トヨタ車体が参画
「Lexus international Co.」
 レクサスを担当。トヨタ自動車九州が参画
「パワートレーンカンパニー」
 エンジンなどの開発を担当
「コネクティッドカンパニー」
 クルマから収集されるビッグデータを活用

中短期の商品計画や製品企画はカンパニーが担う。また、グループ内で車両の開発生産に携わる車体メーカーも各カンパニーに参画。責任と権限をプレジデントに集約し、企画から生産までを一貫しておこなう。

「Toyota Compact Company」プレジデントである宮内氏は80年の入社以来、一貫して生産管理や調達といった生産部門でキャリアを重ねてきた人物。しかし、生産現場のスペシャリストである一方で、大企業ならではの縦割りを感じることもあったという。
「私が勤めていたトヨタ自動車の本社工場と開発チームがいる建屋との間には、国道248号線が走っていまして、カンパニー制が導入されるまでは開発側と調整を行うためには国道をわたる必要がありました。ところが、いまは開発者たちと同じフロアにいて、なにか相談があればすぐに顔を付き合わせて行える。今回のヴィッツのマイナーチェンジでもたくさんのアイデアを出してもらったし、部品の奥に技術者たちの顔が見えるというのでしょうか、非常にやりがいがあった。これまで37年間トヨタにいますが、初めてクルマづくりに参加した気持ちになりました」と冗談ぽく笑う。プレゼン後に立ち話にも気さくに応じ、上のような対話を行ってくれた姿勢からも、宮内氏のよりよいクルマ作りへの情熱を感じることができた。
また、小型車の開発に意識が集中できることになったため、先端技術を使った装備についても、従来では高級車から降りてくるのを待っていたところ、当該セクションに直接掛け合って、なんとかいち早く導入できないか談判することもあると教えてくれた。

 

大胆な組織改革によって、目指す「もっといいクルマづくり」へと邁進するトヨタ。カタログやショールームだけではわからない、走りの質感にまでこだわった新型ヴィッツからは、今後のトヨタのさらなる躍進が期待される。

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