このエントリーをはてなブックマークに追加

開発の現場から vol.6 スバル「グローバルプラットフォーム」

開発現場から聞こえてきたリアルな声から、現代の自動車が抱える問題のヒントや未来への展望を伺う。

今回は、スバルが現在開発中の新型XVについての話題やそこに込められた技術についてお伝えする。

スバル新型プラットフォームに隠された可能性 2017.1.23

「新型XVは、インプレッサに近い、従来のSUVとは違う走りを目指しています」

試乗会の合間にテーブルを囲んだスバルのエンジニア氏は、現在開発を続けているXVについてこのように語った。SUVの人気が引き続くことが予想されるなか、スバルは2016年のジュネーブショーで「XVコンセプト」を発表したが、その市販モデルは2017年中に登場するとされている。その期待のニューモデルの走りについて、ほんの少しヒントを教えてくれるというのだ。

「SUVに興味があるけど、カーブなどでグラっとくるのが怖い、おっとりしている走りに満足できない……という方もまだたくさんいらっしゃいます。そのような方にも納得していただけるように、なるべく乗用車と同じ感覚で走れるSUVにしたいのです」
最低地上高を確保し、サスペンションストロークも長いSUVは重心が高く、車両重量そのものも同クラスの乗用車に比べて重くなる傾向にある。ある意味それはSUVの物理的な資質であり、走りのフィーリングが乗用車に比べて落ちるのも仕方のない話というのが従来的な常識だった。しかし、スバルの開発スタッフはそれを良しとせず、エンジニアリングによって解決したいと考えたのだという。

XVはインプレッサのバリエーションモデル的な位置付けであり、メカニズムとしてはサスペンションなど足まわりを中心に手を加え、最低地上高を確保した内容である。当然新型についてもその関係性は同じであるわけだから、秘密はサスペンションのセッティングにあるのかと想像する。そのことをエンジニア氏に質問すると、このような答えが返ってきた。

「もちろんサスペンションにも手を加えますが、それだけではありません。新型XVには、インプレッサで初めて導入されたグローバルプラットフォームが引き続き使われます。じつはインプレッサを開発するときから、XVを追加することは計画として含まれていまして、グローバルプラットホームにもすでにそのための仕掛けといいますか、XVに必要となるであろう要素を折り込んでいるのです」

SUBARU GLOBAL PLATFORM_1_highグローバルプラットフォームは、スバルが2025年までの将来を見越して設計した新しい車体の基礎。走りの素養を決めるプラットフォームの一新は、大きな性能向上を期待できる一方で、生産設備なども含めた大掛かりな投資が必要となる一大事業でもある。

新型インプレッサから導入されたグローバルプラットフォームは従来のものに比べて剛性は70〜100%、衝突エネルギー吸収率についても40%もの向上を達成。走行性能および衝突安全性の底上げを実現したことに加えて、ガソリン車だけでなく、ハイブリッドや電気自動車への発展性をも設計に盛り込んでいる。まさに今後のスバル車を占ううえで注目すべきテクノロジーだ。

「乗用車からSUVを派生させる際には、SUV化のために重くなる足まわりを支えるべく、車体の方にも改良が必要です。イメージとしてはパッチのようなものをシャシーに取り付けて補強するのです。ごつくなった足まわりと重くなった車体の組み合わせ、これによってSUVの走りは乗用車とは違うものになってしまうのです。しかしグローバルプラットフォームは、あらかじめSUVへのバリエーション展開を想定した設計となっているため、パッチが最小限で済みます。それは結果として車両の重心を低くキープすることにつながり、走りがよくなるのです」
大きな負荷を支えられるように骨格部分をあらかじめ強固につくる。あとから改造できないクルマの基礎部分を鍛え上げたことによって、新型XVの走りは従来のレベルを大きく超えることができるだろうとエンジニア氏は笑顔で言う。そしてさらに、コッソリとこう付け加えてくれた。

「それはひるがえりますと新型インプレッサがオーバークオリティであるとも言えるのです。コストにシビアな実用車でこのような設計を行うことは異例です。そうでなくても新型インプレッサでは、アイサイトを標準装備にしたり、質感を大きく向上させましたから。販売価格は大きく上げられませんから、非常に苦労もありました。しかし、結果的にはコストアップを飲み込んででも、基礎を強固にしたことは正しかったと思っています。」

発表1カ月で月販計画の4倍近い1万1050台の受注や、2016−2017日本カー・オブ・ザ・イヤーの大賞を13年ぶりに受賞したことなど、努力が報われて嬉しいと話すエンジニア氏。快進撃の秘密は、先を見据えた製品づくりと、本質を追求するエンジニアたちのスピリッツに隠れていた。

IMG_2609