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開発の現場から vol.5 レクサス「NAVI・AI-AVS」

開発現場から聞こえてきたリアルな声から、現代の自動車が抱える問題のヒントや未来への展望を伺う。

今回は、レクサスがFモデル向けに開発した新技術を通じて目指す、真の意味でのプレミアムブランドへの飛躍についてお伝えする。

真なるプレミアムブランドに。レクサス飛躍の鍵を握る新技術 2016.12.27

ブランドとはなにか。プレミアムとはなにか。このテーマは、レクサスがこれまで正面から向き合ってきたもので、先行する欧州プレミアムメーカーに互してさらにその上をいこうとするならば、必ず超えなければならないものでもあった。
そして、その頂を踏破するには、高性能・高精度・高価格であるだけでは足らず、プロダクツとしての信念や味わいといった観念的なものを商品のなかに表現する必要があったわけだ。そしてレクサスは、スタイリング面では「スピンドルグリル」というひとつの個性を編み出すことに成功した。そうなると、いよいよもって求められるのが走りの質感、世界観だ。

レクサスは現在、その目指す走りを「すっきりと奥深い」乗り味と定義している。これはRC FやGS Fだけのものではなく、レクサスブランド全体にも及ぶテーマとして設定されたものだ。それに対して、さまざまな技術的アプローチを積み重ねることで達成を目指している。改良にあたってはボディ剛性の強化やサスペンションの改良に加え、実験部隊がさまざまなシチュエーションで実走を重ね、人間の感性に沿った動きとなるように努めた。レクサスにとって「F」こそがブランドを象徴するモデルであると位置づけ、その走りを磨き上げることで、プレミアムブランドとしてさらなる飛躍を目指す。

今回、一部改良を受けたRC F、GS Fに試乗する機会を得て感じたのは、「いよいよレクサス流のプレミアムな走りが体現できているのではないか」ということ。その鍵を握るのが、標準装備される「NAVI・AI-AVS」(以下AVS)だ。
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AVS(Adaptive Variable Suspension system)は、その名の通り路面状況などに応じて自動的に減衰力を調整する機構。減衰力を電子制御でコントロールするシステムそのものは珍しくないし、従来からレクサス車にもこのような機構は盛り込まれてきた。

従来型の減衰力調整式ダンパーと、RC F、GS Fの新型AVSとの違いは、減衰力を調整する機構の位置にある。

従来型の多くはダンパーの頂上に電動アクチュエーターを備え、それがダンパーの調整ツマミを回転させて内部のバルブ開口面積を変化させることで、減衰力を可変させていた。しかし新しいAVSでは、ダンパー内部のシャッターを電動で直接駆動し、内部のオイル流量を無段階でコントロールする。
そのメリットについて開発スタッフは、「減衰力をコントロールするレスポンスが従来型に比べて約4倍となり、なおかつ無段階に調整できるため、より細やかなセッティングが出せるようになりました」と胸を張る。
じつはこの新しいAVSは、すでにRXやNXで機構としては導入されていたが、それらがオイルをコントロールする機構は別体式でダンパーの外部に設置する必要があった。しかし、Fモデルに採用したAVSでは、コントロール機構をダンパーに内蔵させることで、よりコンパクト化とバネ下重量の軽減化を可能にしたという。言うまでもなくバネした重量の軽減は、乗り心地や運動性能の向上につながる。

RC Fでは19インチという大きなタイヤ・ホイールを装着しながら、乗り心地はしなやかで、なおかつサーキット走行では目の覚めるのような運動性能を発揮する。しかも、クルマの動きがどんな状態でも安定しているので、まったく恐怖感や違和感を覚えることがない。単なる高性能でもなく、安寧でもない、まさしく奥の深いドライビングが楽しめるようになっているのだ。

新型AVSは、ダンパー内部にリニアモーターカーを内蔵したような仕組みであるため、当然ながらそのコストは高価だ。にも関わらず今回RC FとGS Fにそれを標準装備としたのはなぜかと開発スタッフに尋ねると、「新しいAVSを備えることで、走りの質が大きくレベルアップさせられる。それならば、レクサスとしてはすべてのドライバーにその走りを味わってもらいたいと考えました」という回答が返ってきた。
Fモデルは絶対的には高額な商品ではあるが、少量生産モデルであるがゆえに量産によるコストダウンは期待しにくい。それでもなお、AVSを標準装備としたことろに、レクサスの意気込み、覚悟を感じることができた。
ショールームで誰もが実感できるところではない部分にも徹底的にこだわる。それこそが真のプレミアムブランドであり。レクサスはまさしくそういう領域に到達しつつある。
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