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PROTO総研/カーライフ インタビュー

今回も前回に引き続き、「ロボットタクシー」で注目を集める自動運転技術のキーパーソンであるお二方に、自動運転技術の現状、今後の課題、さらにはロボットタクシー 事業の意義などについて語っていただきます。【2016.4.20更新】

自動運転技術とロボットタクシー【後編】 2016.4.20

宗平 ところで、先日藤沢で実証実験が行われましたが、所員の天野が取材させていただきました。

天野 はい。率直に凄いなぁという印象を持たせていただきました。それと同時に、いかなる状況においても「安全性」というものが担保できるのでしょうかとも思いました。安全性を確保するためのパターンというものはどのくらい想定されていらっしゃるのでしょうか。

 

 

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中島 どうもありがとうございました。我々も、その点が重要になると考えております。先ほど話させていただきました「ドライバーズカー」という概念では、一般ユーザーさんが期待するのは、高速道路も安全に走れて、狭い道も問題なく通過でき、渋谷のスクランブル交差点も問題なく走れることなのだと思います。ところが、過疎の地域で期待されるものというのは、交通弱者の方を救うという目的のためであれば、時速は40kmも出れば十分であり、すべての道を走れなくても、一部の道を走行できれば構わないのです。雪の日は走れません、今日のサービスは中止です、ということにさせていただいても構わないわけです。そういう意味では期待値のレベルは高くないわけです。われわれはまず、この期待されるハードルの低いところから始めることができるのではないかと思っております。こうゆう地域の方々は、自動走行のレベルが多少低くても「早くサービスを開始してほしい」と考えていらっしゃると思います。

天野 ロボットタクシーは、あくまでパッセンジャーのためのサービスが基本になっているという事ですね。

中島 はい、そうなんです。

宗平 ロボットタクシーのビジョンは、過疎地域に住んでいない人間にとっても非常に共感できるものだと思います。ひとり暮らしの老人の方を迎えに行くという社会的、福祉的に意味のあるサービスですから、ぜひ世界に先駆けて、いち早く導入していただきたいと思います。ところで、このたびの実験は、実際に一般の方をモニターにされたと聞いていますが。

中島 はい。地域住民の応募者から10組にご協力いただきました。また、地域のスーパーマーケット、イオンさんにもご協力いただきました。それぞれの方のご自宅から、イオンまでの道のりをご案内させていたくという実証実験です。これは、技術の実証実験というよりは、完全に「サービスの実証実験」であるといえます。ロボットタクシーに乗った一般の方がどのような感想を抱くのか、予約を行うためのスマートフォンはどのようなものが適合するのかなど、実際の利用を想定したものとなりました。

天野 実現すると、とても便利だなあと思いました。そして、需要は非常に大きいとも感じました。

 

 

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中島 ロボットタクシーは、技術面ではベンチャー企業のZMPさんが担当してくださっています。この藤沢での実験のために、独自にテストコースや現地などでも膨大な実験を行っていただいております。そうした蓄積をもとに今回は一般の方に参加していただいて、サービスの面での実証実験を行わせていただきました。今後、技術の面でも、さらに進化させなければいけません。その点につきましては経済産業省さんが走行実験等に関する膨大なデータをご提供くださるので、非常に助かります。各社が、これほどのデータを入手しようとすると、コストはとてつもなく膨らんでしまいます。技術の観点からしますと、実際に走行しなくてもシミュレーターを用いてデータを採取することが可能となるのです。

天野 今回の藤沢市での実証実験は成功したわけですが、今後はどのような地域で実験が行われるのでしょうか。差し支えがなければお教えいただきたいと思います。

中島 次回は仙台市の災害危険区域で行わせていただきます。内容は「ドライバーレス」。ひとが座っていない状況でのデモンストレーションとなります。藤沢、仙台の実験が終わりましたら、一度振り返りをさせていただきます。そして次にどこでどのような実験をするかというのが決定されます。

天野 仙台を選ばれた理由というのはどのようなものなのでしょうか。

中島  まずひとつは、国家戦略特区であるということです。国家戦略特区というのは、注力する分野やテーマというのがそれぞれいくつか掲げられているのですが、仙台市ではそのひとつが「自動運転」でした。とくに災害危険地域というのはひとも多く住まれてはおりませんので、土地の有効活用として「レベル4」、自動運転化の実証実験として活用しましょうということでご賛同いただきました。

 

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天野  ロボットタクシーのことをはじめて知ったとき、自動運転ということから「ハイテク」のイメージがあって、どちらかというと若いひとが興味を示すものなのかと思っていました。ところが、今回お話をうかがって、高齢者の方々や本当に困ってらっしゃる方のためになるサービスなのだと知ることができました。

中島 どうもありがとうございます。

宗平 今後、実用化を見据えた地域でありますとか、対象者というのはどのようなものでしょうか。

中島  一番最初はやはり過疎の地域になると考えています。しっかり選定させていただき、地場の業者さん、行政、さらには中央省庁のさまざまな規制に携わられている方々とも連携をさせていただき、「地域に最適化された新たな交通サービス」というのを構築していきたいと考えております。

天野 先ほど自動車メーカーさんとは、目指すもの考え方が異なるとうかがいましたが、何かで協力されていることはあるのでしょうか。

中島 ロボットタクシーとしてはございません。独自で進めております。ただ、協調といったことでは、自動運転用の地図などについて、メーカー間での情報交換や確認といったことが行われていると思います。

宗平 自動車業界の方と話すと、ロボットタクシーが注目されていることを感じるのですが、いかがですか。

中島 最近、タクシー業界から「お話を聞かせてください」というお声がけをよくいただきます。

宗平 それは「勘弁してください!」、「そんなことやめてください!」ということですか(笑)

中島 いいえ、それがまったく違うんですよ。タクシー業界もいろいろな経営課題があるのですが、そのなかでも「人材不足」が最も深刻だと言われています。ドライバーさんの確保が難しいということで、先日うかがったタクシー会社さんでは、車両の1割以上が稼働していないとのことで、呼び出しの多い雨の日などは、「ドライバーがいれば対応できるのに……」と残念に思っているとのことです。

宗平 ロボットが進化すると、人間の仕事を奪ってしまうという、ネガティブな面もあると思うのですが、これは誰の役にも立ついい話ですね。

 

 

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中島 ドライバーさんとロボットタクシーが共存共栄していけるように、これからも連携を密にしていきたいと思います。タクシー業界さんもその可能性を真剣に調べられているところです。我々もタクシー業界さんの悩みなどをうかがいながら、何をしたら役に立ち、何をしたらご迷惑になるのかを勉強させていただいています。

天野 既存の交通サービス事業者と助け合う、共通の利益も生み出されるというのは平和的ですね。

中島 このプロジェクトは、「自分だけがよければいい」という考えではありません。公共交通なので、各地域に根ざしている会社さんと共存共栄を図れなければ、ロボットタクシーも地域に根ざしていけないと考えています。プロジェクトの導入を検討する場合は、必ず地場の会社さんと協力関係を築くように心がけています。その結果、そういった会社さんからも興味を抱いていただいています。

宗平 古い「ビジネス」という概念からはなかなか、出てこない発想ですよね。それゆえのご苦労もおありだと思いますが。

中島 呼ばれていくと、中には最初、対決姿勢で臨まれるタクシー会社さんもあります(笑)。それでも、その地域の問題点、タクシー会社さんの問題点などを明らかにしていき、新しい「テクノロジー」で解決策を提供する、というスタンスに変わりはありません。ニーズが存在しなければ、いくら「新しいでしょ! スゴイでしょ!」と叫んでも、広まらないですから。求められているところでサービスを提供していきたいと思います。

宗平 ロボットタクシーでは、完成車を用いてタクシーとされていますが、車両自体の開発は行わないのでしょうか。

中島 共同でプロジェクトを進めるZMPさんは、自動運転に欠かせないセンサーとAIを組み合わせた自動運転の制御では非常にレベルの高い技術をもっています。しかし、自動車メーカーさんはやはり車体そのもの制御や大量生産していく技術、ノウハウに関しては長い歴史があります。それはまったく敵いません。我々は、そこで勝負していこうとは考えておりません。車両に関しては、OEMメーカーさんと協力していきたいと考えています。今回はたまたまトヨタさんから購入させていただきましたが、それは決められているわけではありません。

 

 

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宗平 素人考えで恐縮なのですが、ロボットタクシーを作成するために、たとえばブレーキなど、どのくらいのところまで加工したりするのでしょうか。

中島 いまのクルマは基本的に電子制御のため、ハードウェアに手を加えなくても、制御する部分と通信ができれば問題はありません。

天野 制御についてなのですが、ビデオを観させていただきましたところ、本当にスムーズに停止できているのに驚かされました。

宗平 プロトコーポレーションは、ユーザーに有益な情報を提供していくという目的で、最近は販売店だけでなく、整備工場などとも協力させていただいているのですが、ロボットタクシーが実際に運用を始められた場合、車両のメンテナンスなどはどういったカタチで行われるのでしょうか。

中島 われわれは「サービス業」であると思っておりますので、その地域にあるタクシー会社さんに整備、清掃をお願いすることを考えています。また、もしかしたら整備工場などを持っているガソリンスタンドさんにも委託させてもらうかもしれません。さらには地域にある整備工場さんに委託する可能性も十分にあります。われわれ自身ができない分野ですので、可能な業界の方々とのパートナーシップというのを重視しています。

宗平 なるほど。DeNAさんはZMPさんとタッグを組んで、国の後押しも受けながら新たなサービスの展開を計画されているわけですね。そして、本格的な実現にはさらなるサポーターを必要とされているわけですね。

吉田、中島 そうですね。

宗平 吉田さんから見て、現在の問題、今後の課題というのはどのようなものであるかを教えていただきたいのですが。

吉田 先ほど中島さんがお話になった「法規制と技術、社会の需要」ですが、まず技術はこれからまだまだ進歩しなければなりません。そのための支援をしっかりしていかなければと思っております。法制度は他省庁の話になりますが、技術やニーズの高まりと並行して検証が進んでいくと思います。例えば、車両の技術基準を担当する国土交通省さんとは、技術開発についても緊密に連携しながら共同で取り組んでいきます。来年度は予算も新たにいただき、新しい自動運転のモデルの実証事業も計画しています。ロボットタクシーさんの考えに近いかもしれませんが、地域のある地域の自動運転化というのもひとつのモデルであると考えています。それ以外にもバレーパーキング(駐車を係員に任せる)の自動化なども候補です。

 

 

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天野 国連規制で、自動ステアリング機能の使用は時速10km未満の走行時に限られるとなっていますが、そのあたりの縛りというところでのご苦労はございましたでしょうか。

吉田 国連の欧州経済委員会にクルマの技術基準の国際調和を担う会議があり、日本は国土交通省の担当ですが、そこでおっしゃられた「時速10㎞以上でのステアリング操作を禁止する」という規制について、日本とドイツが主導して議論が進んでいると聞いています。

宗平 それは日本が自動運転の先進国であると理解していいのでしょうか。

 

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吉田 はい。それは間違いなくそうです。この国連の会議では日本とドイツが議長を務めて、議論をリードしていますので。

天野 2020年にはパラリンピックもございますので、お身体の不自由な方も活用することを見据えていらっしゃるわけでしょうか。

吉田 そうですね。少し大きな話になるのですが、自動運転はそもそも何のためにやるのかといいますと、まずは交通事故の削減です。これは大きな旗であると考えますが、それに加えて、例えば今後、高齢者が増え、ハンディキャップを持ったひとも含めてもっと「移動の自由」を確保していくことも大事です。自動車の運転免許証も、高齢になると返上される方もおられますが、自動運転の技術で安全性を高めていくことは、社会的にも大きな価値があることだと思います。

宗平 そうですよね。素晴らしいですね。まずは2020年ということがひとつの目的地点となるわけですが、まだまだ大変だと思いますが、なんとか頑張っていただき、他国には絶対に負けないでほしいですね。

中島 そうですね、産官で協調させていただきながら、ロボットタクシーを早く実現させたいです。

吉田 国としても、サポートをできるよう努力していきます。

宗平 期待いたしております。この度は大変貴重なお時間をいただきまして、どうもありがとうございました。

吉田 ありがとうございました。

中島 ありがとうございました。

天野 ありがとうございました。

 

 

 

 

【対談者プロフィール】
吉田 健一郎 経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術・ITS推進室長。

中島宏 ロボットタクシー株式会社社長。DeNA執行役員 オートモーティブ事業部長。

宗平光弘 「PROTO総研/カーライフ」所長。株式会社プロトコーポレーション常務取締役。「2016-2017 日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員。

天野良香 「PROTO総研/カーライフ」所員。