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PROTO総研/カーライフ インタビュー

クルマユーザーの方々、自動車業界に携わる方々に有益な情報を提供する場として開設された「プロト総研/カーライフ」は、Gooシ リーズを手がける株式会社プロトコーポレーションが誇る最新の情報システムからフィードバックされるデータをリアルタイムでお届けしていきます。
このコーナーではPROTO総研所長の宗平が毎回ゲストをお迎えして、「クルマ」に携わるひと、ユーザーの皆さんに役立つお話をうかがいます。今回は、「ロボットタクシー」で注目を集める自動運転技術のキーパーソンであるお二方に、自動運転技術の現状、今後の課題、さらにはロボットタクシー事業の意義などについて語っていただきます。【2016.4.20更新】

自動運転技術とロボットタクシー【前編】 2016.4.20

次世代自動車技術の主戦場「自動運転」

(出演者すべて敬称略)

宗平 大きな注目を集める「ロボットタクシー」、「自動運転」においてご活躍のお二方からのお話、楽しみにさせていただきました。本日はよろしくお願いいたします。

吉田 よろしくお願いいたします。

中島 よろしくお願いいたします。

宗平 まず、いきなりですが。「自動運転」、とても注目されていますね。

吉田 そうですね。国としても、自動運転は目下の重要課題となっています。安倍総理も昨年、オリンピック、パラリンピックが開催される2020年までに、「高速道路における自動運転」を実現すること、そして「無人の自動運転サービス」を目指していくことを明らかにしています。

宗平 もはや国策ともいえるほど重要な案件なんですね。

吉田 実現のためには、官民や省庁間の連携が非常に大切になってきます。現在、内閣官房と内閣府が主導するプログラムの下、自動車メーカーさん、サプライヤーさん、大学・研究機関、そして警察庁や総務省、経済産業省、国土交通省が、一昨年から共同で動いています。具体的には、自動運転技術において、協調できる分野を見定め、必要な取り組みを進めています。

宗平 協調できる分野といいますと。

 

 

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吉田 たとえば自動運転用の詳細な「地図」がそうです。これはもちろん各メーカーさんが必要とするものですが、各社バラバラに調達するのではなく、互いに協調してその仕様を決め、また同時に実証実験なども共同で行っていく予定です。

宗平 国が旗振り役となって進んでいくわけですね。

吉田 はい。国際競争という観点からも、非常に重要な案件であるという認識です。

宗平 国際競争というお話ですが、国民感情で言いますとやはり、日本に頑張って欲しいという気持ちが強いです(笑)。世間では、Googleさんなどが西海岸で行う実験が大きく報道されていますので、「やはりアメリカはこの分野において進んでるのだなあ」とすこし寂しく思ったりしているのですが、実際のところはいかがなのでしょうか。

中島 「進んでいる」ということで申しますと、「国としての環境整備」と「民間事業者の技術力やサービス力」という2つの基準で推し量れると思います。まず国としての環境整備ですが、この点につきましては調べれば調べるほどに、日本は非常に進んでいることがわかります。

宗平 おお、そうなんですか!

 

 

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中島 ええ、間違いありません。これはあまり知られていないのですが、とても進んでいます。たとえば日本では「レベル3」、つまり、ひとがドライバーズシートに座っていれば、ハンドルとアクセルに触らないでも公道で堂々と実証実験を行えることになっているのです。また、先程のお話ですが、安倍総理が2020年に高速道路や一般道での自動運転を実現していこう、と発言されたように、明確なタイムスケジュールを設定している国は、私の知っている限りではほとんどありません。 日本はかなりアグレッシブにこの分野での環境整備に取り組んでいると断言できます。

 

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宗平 それは、われわれも認識を改めなければいけませんね。

天野 そうですね。報道から受けるイメージとかなり違いますね。驚きました。

中島 欧米企業はPRが上手ですからね。インパクトがありますよね。ただ、自動走行の試乗環境という意味での制度設計や実証実験の環境整備においては、日本にいる私たちは相当恵まれていると思います。もし同じことを海外で行おうとしたら、さまざまな手続きが必要となってしまいます。またはそもそも実験走行が許可されていなかったりします。

天野 そうなんですか。

中島 はい。タイムスケジュールに関しても同様で、いつ規制緩和を行うかなどについては明確にされていない国がほとんどです。仮に問い合わせをしても、「まだ決まっていません」という返答があるばかりなのが現状です。吉田室長、そういう認識ですが間違いないでしょうか。

吉田 正しいと思います。もちろんアメリカやヨーロッパもこの分野においては、積極的に取り組んでいますが、われわれも相当注意を払って海外の情勢を注視しているつもりです。日本の開発環境が他国に比べて劣るというようなことがけっしてないようにしていく必要があります。

宗平 大変なご苦労ですね。頼もしい限りです。しかし、西海岸での大掛かりな実証実験ばかりが大きく報道されるのはなぜなのでしょう。日本メーカーの技術は遅れているのでしょうか。

中島 これはそれぞれの企業の技術力という話になると思うのですが、Googleさんなどは開発などの取り組みを外部に向けて広く公開するスタンスで、その方法にも非常に長けています。プロモーションが上手なので、それを観たひとは、開発が非常に進んでいるように見えると思います。日本のメーカーさんは自動運転についての技術をあまり公表しないため、単純な比較は難しいのですが、私が見聞きする限りにおいて、日本のメーカーさんの技術力は非常に高いと思います。

宗平 そうですか。そういうお話はやはり日本人としては励まされます。ぜひ知りたいですよね。われわれは心のどこかでは、こと技術力に関しては「どこにも負けないぞ」という自負があると思います。ただ、テクノロジーは優れていても、グローバルスタンダードを構築するのは苦手で、商品化でよその国に遅れをとってしまう印象があります。今回の自動運転に関しては、実用化で遅れをとるような事は無いのでしょうか。

中島 高速道路における準自動運転のための規制緩和と、私たちロボットタクシーが行う、過疎地域にお住まいの交通弱者のお役にたつ無人の移動サービスに関わる規制緩和とは異なりますので、それぞれ別に規制緩和を考えていただいているという状況です。Googleさんもドライバーレスを考えていますが、自動運転において、自動車メーカーさんとIT企業が目指しているものは少し違うものだと思います。

天野 違うと申しますと。

中島 自動車メーカーさんは、現在販売する車両にいかにして進化したテクノロジーや機能を入れ込んでいくのかということを考えていると思います。それは進化した「ドライバーズカー」とも言えるのですが、一方IT系企業が考える自動走行とは、運転することを前提としないいわゆる「パッセンジャーズカー」ともいうべきものであると思います。

天野 なるほど、そういうことなのですね。

中島 同じ自動運転という括りではあるのですが、完成形は大きく違ったものになるかもしれません。

宗平 そもそも目指すゴールが違うわけですね。

中島 はい。ですが、それは決してどちらがより優れているか、正しいかというようなことではありません。マーケットや作りたい製品、サービスが違っているというだけのことです。それはまた、実現が早ければ良いのかという話でもありません。

宗平 間違っていたら申し訳ないのですが、いわゆる詳細な地図をもとにGPSで正確に走行するという自動運転とセンサーなどによる情報に基づいて、ぶつからないように判断しながら走行していく自動運転とがあると思うのですが。

吉田 技術的には多分その2つは共に必要だと思います。いかに安全に信頼性を高めていくのかということで、同じ方向を向いて進化することが期待されます。自動運転の方向性にもし違いがあるとすると、先ほど中島さんが言われました、市場やビジネスモデルの違いではないかと思います。どのようなニーズを満たそうとしているのかということで、違いが出てくるのではないでしょうか。例えば、高速道路の自動運転と無人の自動運転サービスは、少なくとも当面は、2つの方向性と捉えることができるかもしれません。

 

越えなければならないハードル

宗平 中島さんは以前、法規制と技術、社会の需要が最大のハードルと語られていたと思うのですが。

 

 

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中島 はい、そのとおりです。その3つが重要になると考えています。たとえば、法律で自動運転をしてもよいということになったとします。そして技術的にも自動運転での走行が可能であると仮定します。もはや法律的にも技術的にも、ロボットタクシーが目指す、過疎地域でのサービスが可能な状況なわけです。ところが、サービス対象地域にお住まいのひとが、この無人のタクシーのことを「怖い」と思うかもしれません。また、安全性確保のために、制限速度40kmの道路を時速40km以下で走行したとします。当然のことに思われるのですが、現実的には、制限時速を超えて走行する車は少なくありません。そうなった場合に制限速度を常に守って走行するロボットタクシーは、渋滞を引き起こしたり、周囲から「遅い」と思われる邪魔な存在になってしまうかもしれません。そんなように、怖い、遅いなどと思われてしまうと、地域に根ざす事もできなくなってしまうわけです。これが地域の需要が最後の大きなハードルと考える理由です。

宗平 なるほど、単純ではありませんね。技術について、国はどのような取組を進めているのですか。

吉田 先ほどお話しさせていただきましたとおり、各メーカーさんが協調できるテーマを見定めて、必要な取組を進めています。例えば、走行時の車両前方の映像のデータベース。これは、ひとや障害物のセンシング技術の開発に役立ててもらおうと考えています。センシング技術の開発のために、実際の走行による実証は欠かせませんが、このデータベースによって、その工程を大幅に簡略化して開発効率が向上することを期待しています。

天野 それは確かに、開発コストの面から非常に助かるのでしょうね。

吉田 また、産学が自動運転技術の開発に利用できるテストコースも整備していきたいと考えています。市街地での自動運転技術を向上させるため、複雑な交差点や見えにくい障害物、または逆光による眩しい状況などを再現できるようなテストコースを整備したいと考えています。

宗平 データベースというようなものは、いったい何年分ぐらいとなる予定ですか。

吉田 何年分というよりは走行距離になりますが、大体5万km分ぐらいのテストの映像となります。

中島 我々民間の企業が、5万kmの走行実験の映像を得ようとするととんでもない費用がかかってしまいます。国の方で、使っても良いと言ってくださるこれらのデータは非常に貴重なものとなります。そのデータをもとにしての開発というのは、各企業それぞれのアプローチで行われるわけです。

天野 協調するところと独自性を追求するところ、または競い合うところなど、さまざまなフィールドが存在するのですね。

 

 

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中島 自動車は、日本にとってまさに基幹産業というものです。業界に携わっている人も多い。そういう意味で、外資との競争に負けてしまうことによる影響は計り知れない。現時点の日本の自動車業界は、ものすごい力があり、常に国際的な競争にも打ち勝ってきました。今後も含めて、様々な状況の変化のなかでも産行全体として勝ち続けるためにも、新参者である我々としても、ご迷惑にならないように(笑)どういう協力関係をとったほうがいいのか、ということをいろいろと相談していきたいと思います。

 

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吉田 おっしゃるとおり、自動車産業は非常に重要で、日本にとってはなくてはならない産業であることは間違いありません。自動車メーカーだけではなく、サプライヤー(部品メーカー)も含め、自動車産業全体で、国際的な競争に勝つことが期待されます。そのための環境整備、例えば、先ほどお話した協調領域の取組の推進は大事です。また、国際的なルールづくりへの関与も重要で、先ほど宗平さんが指摘されましたが、たしかに技術は優秀なのだけれど、結果的に負けてしまうことにならないようにしないといけません。国全体で考えて対応していく必要があると考えています。

 

 

 

後半に続く

 

 

【対談者プロフィール】
吉田 健一郎 経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術・ITS推進室長。

中島宏 ロボットタクシー株式会社社長。DeNA執行役員 オートモーティブ事業部長。

宗平光弘 「PROTO総研/カーライフ」所長。株式会社プロトコーポレーション常務取締役。「2016-2017 日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員。

天野良香 「PROTO総研/カーライフ」所員。