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PROTO総研/カーライフ インタビュー

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 実際のデータを使用して経験を積めることが産学連携のメリット。最終的にはビジネスに繋げていきたい

清水 1ヶ月後の価格が分かることで、中古車販売店にはどのようなメリットが生じるのでしょうか。

鈴木 将来的な下取りや仕入れの目安になります。

清水 時間が1ヶ月経過すると、どのくらい価格が変わるのでしょうか。

山下 例えばレクサスLSのような高級車では、1ヶ月に数十万円くらい価格が下がる場合もあります。

鈴木 比率に換算すると、1ヶ月に10%くらい相場が変化することもあるのです。具体的には、例えばプリウスは月々の価格変動が少なく、時間の経過に従って、なだらかに価格を下げていきます。しかしパジェロは趣味性が強かったり季節性のある商品なので、月々の変動が大きいです。

清水 頂いた資料を拝見すると、確かにパジェロは月々の上下変動が大きく、翌月になって落札価格が上がることもあります。パジェロの場合、全般的に春から夏にかけて価格が下がり、夏から秋は上下動を繰り返し、秋から冬にかけて値上がりする傾向です。予測が難しそうですが、実際の変動を照らし合わせると、21ヶ月中で17ヶ月は当たっています。的中率が高いですね。どのような理由でこうなったのでしょうか。

鈴木 やはり過去のデータが、それを示しているからです。

山下 基本的に冬が高めですが、夏休みの前に値上げされることもあります。

清水 パジェロはSUVなので中古車輸出も活発です。その影響も含まれますか。

山下 過去のデータとして入っています。

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今回の共同研究である中古車の落札価格予測について、スライドを使用して説明を行ってくれた。

清水 中古車を扱う業者では、1ヶ月後の予測から、どのような活動ができるのでしょう。業者の具体的なデータ活用法を教えてください。

鈴木 例えば価格が高い月は買わないとか、逆に下がる月を待って仕入れるなど、価格変動を予測した有利な買い方ができます。そしてオークションで購入する時には、素早い判断が求められます。どの車種を買うのか、予め決めておく必要があります。予測されていれば、その判断をしやすいです。

清水 そうなると予測データによって大きなメリットを得られるのは、オークションを通じて車両を仕入れたり売却する中古車販売の関係者でしょうか。

鈴木 現状では落札価格を予測していますから、そうなると思います。

清水 買い取りをする業者に、1ヶ月後の落札相場を提示できれば、それよりも安く仕入れることで利益を増やすことが可能です。この情報の商品化が産学連携の大きな成果です。買取店や中古車店を支援するには、コア(中核)になるデータが必要です。それがオークションなどの今流にいえばビッグデータで、この分析をすることにより、正確性の高いデータを提供できます。そこで私たちと鈴木教授、大学の皆さんが、同じデータを使いながら協力して予測を行うようになりました。これこそ産学連携のあるべき姿だと思います。今では協力の開始から2年を経過したので、学会の発表を含めて、形になりつつあります。それから中古車業界も変化しており、今では中古車に関わるプレーヤーも増えて、オークションが先進的になりました。人が目利で選んでいた昔とは、システムが大きく違います。そこで「落札価格の予測」という商品が重要になりました。プロトコーポレーションでは派生商品として、3~5年後に価格がどの程度下がっていくのか、というデータも提供しています。活発に利用されているのは、買取店や販売店ですね。以前は減価償却をベースにしていましたが、データ分析により、市場の流通価値に合った情報提供が可能になりました。提供するデータの正確性が高まると、例えばSUVや4WDを価格が下がる春先に暖かい地域で仕入れて、その後輸送した上で、冬の積雪地域向けに売るといった工夫も可能です。

鈴木 こういった点を見越して、中古車を先物商品にできると、さらにメリットが広がります。

清水 ご指摘のように、今のところは買取や仕入れ支援であっても、将来的には中古車が金融商品に昇華するかもしれません。学生の皆さんは、この産学連携に、どのような魅力を感じていますか。

工藤 実際にビジネスで使われるデータを研究対象にして、仕事に結び付くところがとても興味深いです。
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山下 もともとクルマにはあまり興味がなかったのですが、最近は楽しくなってきました。またビジネスの厳しさを、社会に出る前に知ることができたのも良かったです。
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速見 実際のデータを使うので、社会に出ても通用すると思います。貴重な経験をさせていただきました。中古車の流通は、今までほとんど知りませんでしたが、理解できました。

櫻井 この研究で接しているナマのデータは、表現は悪いですが、キレイではないです。ていねいに分析しなければなりません。今はAIの導入が話題ですが、データをいかに活用するかが重要だと思いました。データクレンシングした上でAIを使う、この向き合い方が分かったように思います。
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清水 データを扱う上での注意点は、どのようなことでしょうか。

櫻井 キレイなデータではないので、欠損値もあったりします。理論通りに進むわけではないことも学びました。そこで今度、オークションの会場などを実際に見学したいです。実務の現場を学びたいですね。

清水 その気持ちはとても良く分かります。ぜひ皆さんが見学できる機会を設けてみたいですね。産学連携で得られる企業側のメリットは、私たちがビジネスの中では知り得なかった新しい法則、専門家としての真理を発見できるのが究極的な目標です。

鈴木 産学連携を通じて、最終的にはビジネスに繋げたいという思いもあります。そうしないと、机上の空論で終わる可能性があるからです。せっかく開発したものは、実際に使ってみたいです。

清水 すでに鈴木先生は、会社を立ち上げておられますね。

鈴木 ベンチャー企業として、私が代表になっています。CollabWizという社名です。CollabWizとは、Collaboration + Wisdom の略語で「集合知」を意味しています。そもそもの発端は、たくさんのAIの投票によって投資判断する集合知AIモデルで国際賞を頂いたことによりますが、こういった研究成果が「机上の空論」ではないということを確認するまで、つまり実際に産業利用として役立つまで携わりたいと思い、会社を起しました。
また、他業界の方々とコラボレーションすることで、金融に限らず医療や農業など様々なX-Tech分野に貢献できればと考えています。機械学習などのAI技術をアドバイザー業務として企業に提供して、一緒に開発する形を取っています。先方のデータをお借りし、分析や予測をするわけです。ただし利益は二の次です。産業利用を重視しております。大学のあり方も、昔に比べると変わってきました。最近は共同研究のオファーも増えております。

清水 大学と実践的なビジネスの関係も、さらに緊密になりそうですね。皆さん、本日はありがとうございました。建設的で有意義なお話をうかがえました。

(テキストまとめ/渡辺陽一郎)

【対談者プロフィール】
鈴木智也
茨城大学大学院 教授
理工学研究科 機械システム工学領域長
CollabWiz株式会社 代表取締役(http://www.collabwiz.co.jp/)
大和証券投資信託委託株式会社 クウォンツ運用部 特任主席研究員
国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)
複雑データサイエンス研究室 運営