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PROTO総研/カーライフ対談 第3回

PROTO総研/カーライフ所長の宗平がゲストをお迎えして、「クルマ」に携わるひと、ユーザーの皆さんに役立つお話を伺うこのコーナー。新春恒例のカーライフ対談、今回は自動車ジャーナリストの九島辰也さん、カーライフ・エッセイストの吉田由美さんをゲストにお迎えし、さまざまな話題を振りまいた2017年の自動車業界を振り返り、2018年の展望へとつなげていく話をお届けします。

2017年の振り返りとそこから見えてくる自動車のこれから 2018.1.19

宗平 本日は、新年早々お集まりいただき誠にありがとうございます。2017年の自動車業界のトピックスと2018年の展望について、さまざまなお話を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

吉田 お招きいただきどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

九島 2017年もいろいろとありましたね。本日はよろしくお願いいたします。

 

歴史的激戦の2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー

宗平 それでは早速お話をうかがいたいと思います。まずは「2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー」ですが、今回はなんと輸入車のボルボ XC60がイヤーカーに輝きました。選考委員を務められたお二方ですが、この結果は意外だったのでしょうか?

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吉田 XC60、出来は良かったですからね。順当といえるのかもしれませんね。

九島 ホント、よくできています。それでも、大賞受賞には驚きました。

宗平 それにしても、投票結果の発表は最後まで手に汗握りましたね(笑)。得点を見ますと、

 

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となっています。

九島 輸入車同士の対決もすごかったですね。

吉田 そうですね。200点以上が4モデルという大接戦でした。最後までドキドキしました。

宗平 たしかにXC60乗ったときには、本当にいいクルマだと思いましたからね。インテリアも素晴らしかった。北欧調の家具に包まれるようで落ち着きますね。

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九島 ボルボはいま、インテリアは今回10ベストの中でトップではないでしょうか。ボルボのインテリア・デザイン部門の責任者であるロビン・ペイジはベントレーからやってきて、XC90を皮切りに新世代ボルボの豊かな室内空間を作り上げました。その手腕はかなりのもので、ヨーロッパでは「インテリア・デザイン・オブ・ザ・イヤー」という賞も受賞しています。

吉田 九島さんの評価も高かったですね。

九島 そうですね。僕はレクサス LCが最高点(10点)で、BMW 5シリーズとボルボ XC60が次点(6点)でした。宗平さんが言われたとおり、XC60のインテリアデザインは見事で、全体的な造形のセンスも素晴らしいと思う。

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宗平 XC60の走りはどうですか。

九島 ガソリンエンジンの出来は素晴らしかったけれど、ハイブリッドがいまいち重たく感じられました。まあそこは、今後に期待したいところですね。BMWも素晴らしいのですが、4気筒エンジンはいまいちのフィーリングでした。

宗平 吉田さんはいかがですか、今回のカー・オブ・ザ・イヤーは。

吉田 私はXC60は3番目の点数(4点)でした。もちろん素晴らしいクオリティのモデルということで高く評価しました。ただ、価格の高さ(599万円~884万円)とコンパクトSUVとは呼びにくいサイズの大きさ(全長4690mm、全幅1900mm、全高1660mm)など、幅広いユーザーへの訴求を考えるとベストな選択とは思えませんでした。

宗平 なるほど。たしかに、立派すぎる感はありますね。吉田さんが最高点をつけたクルマは何ですか。

吉田 私はスズキ スイフトに10点をつけさせていただきました。

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宗平 そうでしたね。少し驚きました。吉田さんのイメージと違っていたもので。

吉田 何人かの人からそう言われました(笑)。自分のクルマ選びではたしかに選ばないかもしれませんね。ただ、マイカー選びというのは「I(アイ)」という自分目線でいいのですが、カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員としては「We」というフラットな視点でクルマを吟味しています。このスイフトは自分のクルマとしてではないけれど、多くのクルマユーザーに強くお薦めできるモデルだと思います。

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宗平 スイフトスポーツの走りは本当に痛快ですよね。運転していて思わずはしゃいでしまいました。

吉田 次点(7点)をつけたのがホンダ N-BOXでした。どちらにするか、かなり悩みましたが、走りが素晴らしくプライスでも本当に頑張っているスイフトに決めました。私も運転していてとても楽しかったです。「乗ると笑顔になるクルマ」。日本が太鼓判を押して、世界に発信するのはそんな1台であってほしいなあと思いました。

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宗平 なるほど……。

九島 これはもうカー・オブ・ザ・イヤーはスイフトに変更ですね(笑)。吉田さんの選考理由は説得力あります!

宗平 ちなみに、もし吉田さんが「I(アイ)」という目線で選んだら、どのクルマになったのでしょうか?

吉田 XC60です!

宗平 そうですか、即答ですね(笑)。

吉田 ああいうキラキラした感じ、大好きです。ひょっとしたらさらにコンパクトなXC40が登場したら、そちらがいいかもしれません。今回は「XC60、いいな、いいな!」と思いながら、スイフトに点を入れました(笑)。

九島 プロフェッショナリズムに徹したのですね。

宗平 選考委員の方は、それぞれ独自の価値基準で評価されているのですよね。コストパフォーマンスなどは一切考えない、というひともいたりするわけですか。

 

九島 はい、それぞれ独自の基準を持っていると思います。選考委員が60名近くもいるのは、多様な評価を反映させるためだと思いますね。いずれにしても、今回の配点は非常に選考委員泣かせで、難しかったですね。

 

2017年、人気はSUVもミニバンも「コンパクト」

宗平 2017年、ヒットしたクルマとしてはどのようなものがあったのでしょうか。

九島 プリウスがトップでした。前の年と比べるとずいぶん落ち着きましたが、それでも16万台を超える強さを見せました。アクアも堅調でしたね。やはりハイブリッドの代表選手はすごいですね。

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吉田 日産ノートも売れましたね。プリウスに迫る勢いでした。eパワーの力強さは「ひと踏み惚れ」などと言われますが、気持ちのいいトルク感です。クラスを超えたゆとりが感じられて爽快な乗り味ですね。人気が出て当然ですよね。

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宗平 たしかによく見かけますね。それとコンパクトSUVのトヨタ C-HRも目立っていますね。

九島 C-HRは大ヒットでしたね。メイン市場のヨーロッパでも好調だそうです。小さなSUVは世界的なブームですからね。名前のC-HRは「コンパクト・ハイライダー」ということですけれど、ルックスのインパクトがとにかく大きいですね。一度見たら印象に残る。それに「走り」が想像以上にいいこともヒットにつながっていると思います。ニュルブルクリンクに持って行って走行評価を行ったのもダテではないですね。

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吉田 そして、コンパクトミニバンのホンダ 新型フリードも売れていますね。強力なライバル、トヨタ シエンタを超えました。

九島 フリードとシエンタは「究極のパッケージング」を競い合っています。あのサイズで3列シートというのは本当にすごい。

宗平 そしてある意味、非常に日本的なモデルですね。

吉田 2017年の特徴としては、「コンパクト」というのがキーワードだったと思います。SUVもミニバンでも、サイズの小さなモデルに注目が集まっていたと思います。

九島 たしかに、ノア・ヴォクよりもシエンタやフリードの印象が強かったですね。

 

 

未来のモビリティ、電動化とAIがテーマだった東京モーターショー

宗平 では次に東京モーターショーの話に移りたいと思います。少し前になりますが皆さんの印象はいかがでしたか。

吉田 一見静かなようでしたが、各自動車メーカーから意欲的なモデルが数多く出ていて、なかなか中身の濃いショーだったと思います。

九島 そうですね。印象に残ったのはさまざまなコンセプトカー。とくにトヨタのブースは勢いがありましたね。パーソナルなモデルから公共交通に至るまで、「この国のモビリティを変えるぞ!」と言うような意気込みが感じられました。非常にコンパクトな個人移動用の「TOYOTA Concept-愛i RIDE」から、ジャパンタクシー、そして市バス「SORA」にいたるまで、エネルギー効率の優秀さとだれもがアクセスできるバリアフリー意識が行き届いていました。

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宗平 気がつけば、ショーで展示されていた「ジャパンタクシー」はもう東京都内でかなり見かけますからね。小まわりが利いて路地裏でもスイスイと走ってますね。静かでとてもいいですね。

九島 「人にやさしい都市モビリティ」をコンセプトにユニバーサル性を重視した小型モビリティ「愛i RIDE」は、ガルウィングドアに電動スライドシートが目を引きました。また自動運転機能によって、だれもが「安全・安心」に運転できて、シェアリングサービスで多くの人と共有することもできるモビリティ。ジョイスティックの操作もバリアフリー的ですね。市バスのコンセプト「SORA」は水素燃料電池による力強くクリーンな走りと、だれにとっても乗り降りが簡単というアクセスの優秀さが光ります。春からは都内で導入されるというので、楽しみですね。

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吉田 これまでの注目を集めることが大きな目的という姿勢から一歩脱却し、近い将来の交通状況をしっかりと捉えているような現実的な施策が増えたように思います。現実感のある「夢」という感じで、とても見応えがありました。

宗平 そうすると、新型センチュリーもあんな感じになるのでしょうか。日本、海外からのVIPを乗せて静々と走るセンチュリーですが、コンセプトカーの前にはずっと人だかりができるほど注目を集めていました。

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九島 あれはかっこよかった。非常に重厚で高級感に満ちたあふれていた。ぜひあのまま登場してほしいものです。3代目となる新型でも、高品質なモノづくり、「匠の技」は継承されているようです。進化したショーファーカーの快適装備を見てみたいですね。

 

吉田 ダイハツブースのコンセプトカーもなかなかおもしろかった。なんでも、今までは「モノ」を運んでいたけれど、これからは「コト」を運ぶクルマを作るといっていました。さまざまなアクティビティや商売にフィットする非常に個性的で機能的なコンセプトカーが紹介されていました。DN PRO CARGOなど、実用性を追求しているのにスタイリッシュで、明るい感じのデザインも好感が持てました。

九島 たしかにダイハツの商用EVモデルたち、どれも存在感がありました。

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吉田 女性や高齢者の方でも使いやすい低床フラットフロアによる室内、荷室の大空間、使い勝手の良さが追求されていました。室内高は1600mmで、ウォークスルーもできるので車内での作業性も抜群です。幅広い業種に合わせて変えられるマルチユニットシステムも便利そうでした。

宗平 軽自動車ブランドとして、限られたボディサイズに最大限のユーティリティを詰め込んでいるという感じが伝わりました。

吉田 スズキのコンパクトSUVも、スケルトンで「未来のジムニー」という感じでなかなかおもしろかったですね。

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九島 イー・サバイバーですね。ラダーフレームを用いてSUV伝統の走破性はそのままに、EV化による高い環境性能も実現しているという意欲作です。

吉田 「Honda Urban EV Concept」も素敵でした。コンパクトなボディのEVはどこか愛着を感じさせるデザインで、車両前後にはメッセージや挨拶を表示するディスプレイが付いていてかわいいです。室内はリビングルームのように快適な空間で、AI技術が、ドライバーのライフスタイルや好みを学習して状況に応じた提案をし、人とクルマの自然なコミュニケーションを実現します。

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宗平 それにしても、モーターショーはいいですね。今回も自動車の祭典と呼ぶにふさわしい中身の濃いショーだったと思います。早くも次回が楽しみになってきますね。

 

いよいよ日本でもEV化、先進安全技術が本格的に加速

宗平 さて次はEVについてです。今日、クルマはガソリンのほかにディーゼルやハイブリッドなど、さまざまなシステムで走っていますが、最近EVの存在感が急速に増しています。今後、この動きはさらに加速していくのでしょうか。

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九島 ヨーロッパの主要な国や中国が、軒並みガソリンエンジン車を廃止して、電気自動車への転換を目指すとしています。これまで比較的EV化に遅れていると言われてきた日本でも、ここにきて急速に電動化が進んでいるように思えます。少し前まで、「未来の乗り物」というイメージの電気自動車も、多くの自動車メーカーがリリースして普及しています。2020年の東京オリンピックに向けて、その動きはさらに加速するものとみられます。

吉田 EVの魅力はもちろん環境的な優秀さにありますけれど、発進時からの力強い加速感も特筆すべきものですね。以前は「EVは遅い」などと思われていたりもしましたが、現在ではむしろ逆で、電気モーターは非常に力強い動力源であることが広く知られています。実際に乗ってみると、その優秀さに驚き、EVに拒否反応を示していたひとたちが一気にEVファンになってしまった、という話もよく聞きます。

宗平 充電スポットの増加や充電時間の短縮も、EVの壁を以前よりも低くしていると思いますね。1充電あたりの走行できる距離も伸びるなど、技術の進歩によってEVのネガは次々と解消されています。

九島 そうですね。水素を使った燃料電池車やバイオエタノール燃料で走るクルマなど、さまざまなエコカーが開発されていますが、EVはそれらの中心的な存在となるのは間違いありません。ゼロエミッションである事はもちろん、扱いやすく自動運転との相性も抜群なので、エコ化の流れはEVを中心に動いていくのでしょう。

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宗平 もうひとつ現在のクルマ選びの大きなトレンドといえるのは、自動ブレーキを代表とするセーフティ技術であるように思います。

吉田 そうですね。これまではしばらく低燃費がメインテーマで、メーカー同士、ライバルモデル同士の熾烈な争いが展開されてきました。ところが、最近では低燃費は当たり前という認識がユーザーの間に広がっています。事実、1Lあたり20km走行できるという低燃費のモデルが少なくありません。そうなると、1km、2km走行距離が伸びてもあまり差を感じなくなってくるものです。

九島 そして次なる戦場となっているのがセーフティ技術です。アクセル、ブレーキペダルの踏み間違いや車線逸脱、居眠り運転による追突、スマートフォンに気を取られての痛ましい事故などが連日報道され、高齢者による運転操作の誤りによる事故も社会的な問題となっています。究極のセーフティは、自動運転によって達成する達成されるのかもしれませんが、なによりもまず自動ブレーキや車線逸脱防止機能といったものはあらゆる車に標準装備してほしいですね。

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宗平 最近では、軽自動車や商用車にもセーフティ技術が積極的に導入されてきました。

九島 そうですね。軽自動車でもセーフティ技術の充実ぶりには目を見張るものがあります。急速な普及によって、安全装備も比較的安価になっています。これは歓迎すべき傾向ですね。生活でクルマが必需品なのにもかかわらず、免許の返納をしなければならないひとが救われたり、自動車保険がさらに安くなったりと社会的な恩恵も計り知れません。

宗平 なるほど。EV化、AIの進化によって、自動車メーカー以外のプレーヤーも、クルマの開発に参加してきていますが、自動車メーカーは埋没したりしないのでしょうか。

吉田 自動車メーカーの人たちは「他業種の人は、われわれ自動車業界では思い浮かばない発想を持っている」と話し、危機感を持ちながらも貪欲に学び取ろうとしています。やはりプライドは相当なものだと思います。

九島 プレーヤーが多い方がゲームは盛り上がるというのは事実です。しかし、セーフティや自動運転、さらには電池の開発などにおいても、自動車メーカーには一日の長以上のアドバンテージ、ノウハウがあるのは事実です。

宗平 近年、若者を中心とした「クルマ離れ」が語られてきましたが、こうしてお話を伺っていると、「クルマはまだまだいける!」という気がしてきます。

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九島 これから、もっともっと盛り上がりますよ。未来の快適な生活において、クルマは中心的な役割を演じてくれるはずです。

吉田 とても楽しみですね! 2017年も自動車業界ではいろいろありましたけれど、今年はさらにたくさんのテーマや話題が生まれるような気がします。今年もクルマから目が離せませんよ!

九島 いやー、クルマの話をしていると時間を忘れてしまいますね。楽しかったです! ありがとうございます。

 

宗平 本日はいろいろ有意義なお話を聞かせて頂き、どうもありがとうございました。

九島 どうもありがとうございます。

吉田 どうもありがとうございました。

 

 

【対談者プロフィール】

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九島辰也 長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも、アメリカ、ドイツ、イギリスと、各国のクルマを乗り継ぐ。

 

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吉田由美 数多くの雑誌や自動車関連ウェブサイトなどを中心に活躍するカーライフ・エッセイスト。執筆する複数のブログは驚異的なアクセス数を記録している。

 

 

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宗平光弘 株式会社プロトコーポレーション常務取締役。ITソリューション部門担当。「2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員。当サイト「PROTO総研/カーライフ」の所長を務める。