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PROTO総研/カーライフ インタビュー

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初代モデルを7年間販売して学んだこと

宗平 一方で、電気自動車というハード的側面についても新型は初代から大幅に進化して、実用性が大幅に高められています。初代リーフは、日産自動車として初の電気自動車ということで、通常のクルマとはまた異なる苦労もあったかと思います。ユーザーからのフィードバックも含め、どのような気づきがありましたか。

小塚 初代リーフについては7年間販売を続けてきましたが、正直に申しましてまだまだ販売台数も多くありません。しかしそのなかでも、お客様が何を望み、何を知りたがっているのか、伝えるべきものがわかってきました。それが、7年間の蓄積でもあります。そこで新型については、デザインについても個性的で好き嫌いが分かれることがあった初代にたいして、もっと多くの方に好きになっていただけるようなデザインにしました。じつは日産のデザインチームには必ず女性も参加していて、とくにインテリアについては使い勝手を含めて女性の視点も大切にしています。

宗平 たしかに初代は先進的である一方で、一般的なユーザーからすると、とっつきにくさというか、知的好奇心が求められる側面がありました。そういう意味でも新型リーフには、多くのユーザーを取り込みたいという意図を強く感じます。とくにルーフを塗り分けた2トーンカラーの仕様は、車高が低く見えてスタイリッシュですよね。

小塚 ありがとうございます。日本市場向けのコミュニケーションカラーをホワイトのボディにブルーのルーフという組み合わせにしたのですが、初期受注分の24%がこの仕様になりました。初期に受注いただくお客様は、比較的好きな仕様を選ばれる傾向にあるのですが、ボディカラーについてはオーソドックスというのが通例で、これは本当に予想外でした。

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視覚効果を計算したカラーリングによってスタイリッシュなデザインに。写真:日産自動車

宗平 初代モデルでは、初の量産電気自動車ということもあり、バッテリーの劣化や交換などについて、一部ユーザーの方からは不安の声もあったかと思います。

小塚 これから初めて電気自動車をお求めになるお客様に対して、最初から正しい情報をきちんと提供していくことが大切だと考えています。例えば充電にまつわるインフラについてやバッテリーの保証について、販売会社からもユーザーに伝えていただくようにお願いしています。

宗平 充電インフラについてはある意味で社会的な課題で、一企業ではどうしようもない部分もあるわけですが、そういった社会的な問題についても、積極的に情報を提供していく必要があるということですね。

小塚 充電インフラについては、初代当時から比べて飛躍的に充実しつつある状況ではありますが、今後さらに日産のお店を中心に増やしていきたいと考えています。これは初代から一貫して取り組んできたことなのですが、リーフはこれまでとはまったく異なるライフスタイル、価値観が提供できるクルマだと考えています。自宅に専用機器を設置することで、夜に充電して、昼間クルマを使わないときにリーフを家庭用電源として活用する「LEAF to Home」の機能も引き続きでも採用していますが、これは節電に貢献し、電気料金の節約にもなりますし、災害などの非常時にはバックアップ電源として活用できるものです。
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リーフを家庭用電源として活用する「LEAF to Home」。写真:日産自動車

宗平 住宅との連携はさらに進めていただきたい分野ですね。電気自動車の普及を考えると、集合住宅などに充電ステーションが備わるようになることが望ましいのではないでしょうか。

小塚 まさしくその課題について、既存の集合住宅に充電設備を追加できるようデベロッパーと協議しながら取り組んでいるところです。なかなかハードルは高いのですが、お客様に安心してお乗りいただける環境を作っていきたいですね。

宗平 将来的には集合住宅の付加価値として、インターネット回線や地上波デジタル放送のように受け入れられることになるのではないでしょうか。初代リーフは非常に志が高いクルマでしたが、いろいろな意味で時代が追いついていなかった。しかし、あれから自動車を取り巻く状況は一気に変わり、2017年のいま電気自動車や自動運転が遠い未来の話ではなく、いよいよ手の届くところに近づいてきているという実感が一般ユーザーにあるように思えます。

女性ならではの視点が生かされたCM制作の舞台裏

宗平 じつは私、日産のCMに最近とても注目しているんです。「やっちゃえ日産」のコピーも印象的ですが、そこではなくて、内容が非常にわかりやすくて、なおかつ盛りだくさんだというところに驚きました。すごく欲張りですよね(笑)。新型リーフのCMもおしゃれで、機能がわかりやすく紹介されていて、なおかつ環境への配慮までしっかり盛り込まれている。従来とは違う価値基準でディレクションされているなと考えていました。小塚さんはCM制作にも携わっていらっしゃいますよね。

小塚 はい。確かに従来のクルマCMでは、荒野をクルマが砂煙を上げて走っているような(笑)、イメージ重視の内容が多かったかもしれません。でも、走っているだけでは、「走っている」という事実しか伝わらない。それ以上の価値をどう伝えていくのかということを大切にしています。

宗平 マニア目線では、走っているクルマの映像だけでお腹いっぱいになるのですが(笑)。それでは足りませんか?

小塚 まったく足りません(笑)。それと、これは私が女性であるからこそ気になったのかもしれませんが、新型リーフのCMには「e-Pedal」を体験した女性が「わぁ!」と感嘆しているシーンがあるのですが、最初見たものだと、髪の毛がブワッと顔のほうに乱れる表現でした。それを見て、「こうなって喜ぶ女性はひとりもいません」と修正をお願いしたということはありました。

宗平 そういった細かな心づかいが、ユーザーの共感につながるのでしょうね。

小塚 男性はなんていっても機械が好きだし、詳しい。しかし、だからこそ表現方法としては伝わりにくようなケースも生まれてしまうのではないでしょうか。私がわからないということは、きっと一般ユーザーでも、表現がわからない、伝わらないという方がいるだろうと。たとえば急速充電について説明するのに、「約40分間で○○kW充電できます」という表現をされても、私にはわからない。せめてどれだけ走れるようになるとか、そういう変換をしていかないといけない。

宗平 積み重ねられた常識、慣例がわかりにくさを生み出しているのかもしれません。我々メディアとしても非常に耳の痛い話です(笑)。送り手側が成長し、初心者の気持ちを忘れてしまうことはままありますし、自動車の場合はとくに専門用語がたくさん登場しますから。日産では、2017年4月に国内における女性管理職比率10%を達成されていますが、多様なものの見方を取り入れることで、より魅力的な商品づくりを行える環境が整えられていると言えるのではないでしょうか。

小塚 これからもそういう障壁をなくしていって、こちらがお客様に伝えたいことだけでなく、お客様が知りたがっていることを探さなければならないと考えています。日産では、女性社員がキャリアアップする際に研修を受けることになっています。いっしょに課題などに取り組んでいく間に、異なる部署で働いている女性同士が親睦を深め、悩みを相談するというようなこともあります。

宗平 まだまだ日本の社会は女性が働きやすい環境が整備できているとは言い難い状況ではありますが、日産での先進的な取り組みが、新型リーフのプロモーション活動からも成果となって現れているように私は感じました。今後のより一層のご活躍を期待しております。本日はありがとうございました。

【対談者プロフィール】

小塚 功子

日産自動車株式会社 日本EV事業部部長