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PROTO総研/カーライフ インタビュー

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データ分析から見えてきた経済学的視座による中古車市場の特徴について

清水 助成研究を進められていくなかで、中古車価格に関して多岐にわたるデータを分析されたことかと思われます。そこで、ご専門である経済学的な視座から、中古車価格帯がどのような特徴を持っているのかをご解説いただけますでしょうか。

田中 中古車は個々のクルマが全て異なっていて、どのような需要があるかを新車以上に細かく把握できる点が特徴の一つです。すなわち、ヘドニックアプローチによって、需要を見出すことができる点に特徴があります。また、一般的なオークションと異なり、中古車マーケットで標準化されたデータが整っている点が、他の財と比較した特徴になると考えられます。

清水 ヘドニックアプローチは、財の価値を分析する手法として物価調査などに広く取り入れられていますが、先日、日本銀行での対談でも同じようなお話がありました。我々は日本銀行様にも「グーネット」の過去の乗用車の新車標準価格とその品質を表す特性値等を提供させていただきまして、「企業物価指数(2015年基準)」の基準式に採用していただいております。その際のお話では、我々が提供したデータに基づき推計したヘドニックアプローチを自動車に適用し、指数精度を向上することができたとのことでした。また、定期的に公表されている物価統計の作成において、ヘドニックアプローチを自動車に本格適用したのは、世界的にみても初の事例だとおっしゃっておりましたが、自動車分野ではそのような統計は少ないかもしれません。
商品間の価格差の一部は諸特性の品質差に起因していると考え、「品質変化による価格変動分」を定量的に算出するヘドニックアプローチは、まさに、渋谷さんの研究とも通じるものがありますね。今回はどのようにして、財の要素を決めていかれたのでしょうか。

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中古車には、初度登録年からの経過年数など品質の差によって価格差が生じるという特性がある

渋谷 今回は先行研究に従い、中古車の地域による価格差に着目した研究に用いられているヘドニックアプローチの制御変数を活用しました。その理由としては、被災地と非被災地の価格差を見るためです。具体的には、今回では、トランスミッションの種類やエンジンタイプ、初度登録年からの経過年数、走行距離、走行距離が10万kmを超えているか、そして排気量を用いています。

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田中 分析の結果として、先行研究にあったものが必ずしも有意であったとは限らないということがわかりました。例えばエンジンタイプ、走行距離と走行距離が10万kmを超えているかは、あまり関係がありませんでした。

渋谷 走行距離と初度登録年からの経過年数は相関が非常に強く、走行距離をデータから外しても、説明できる内容となりました。

清水 確かに、中古車の価格はほぼ初度登録年からの経過年数に関係しています。それは我々の肌感覚とも一致する内容ですね。
さて、この度、研究成果を発表されたことでひとつの区切りとなったかと思いますが、渋谷さんの今後のご研究について方向感をお教えいただけますでしょうか。また、研究者の視点から、PROTO総研「プロト賞」に期待することをお教えください。

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渋谷 まずは今回の研究をブラッシュアップしていきたいと考えております。また、先ほど申し上げたとおり、東日本大震災以外の大規模災害時の中古車価格についても同様に分析することで、他の災害時に被災地で必要とされた車両との相違点を明らかにしていきたいです。また、今回の研究は供給する側からのデータを分析する研究でしたので、需要の側からのデータを把握したいと思います。具体的には、ソーシャルメディアのコンテンツから、被災地で求められた車両はどのような用途で必要だったのか、どのように購入されたのかなどを明らかにしていきたいと考えております。

清水 本日はありがとうございました。PROTO総研は、これから渋谷さんの研究に注目していきたいと考えています。今後も、学会発表等の折にはインタビューをお願いしたいと考えています。

渋谷 ありがとうございます。よろしくお願い致します。

【対談者プロフィール】

略歴

渋谷遊野
東京大学 大学院 学際情報学府 博士課程2年
宮城県出身。2010年に慶應義塾大学 文学部哲学専攻を卒業後、宮城県の放送局の報道記者として東日本大震災の取材等に携わる。2014年東京大学 大学院 学際情報学府に入学。現在は災害時の支援物資ロジスティクスに関する研究を進める。国際学会e-Case&e-Tech 2016-fallにてDistinguished Paper Awardを受賞。

田中秀幸
東京大学 大学院 情報学環・学際情報学府 教授
1986年東京大学 経済学部卒業。1994年米国フレッチャー法律外交大学院卒業。1986年。通商産業省に入省し、同省及び自治省にて、経済・通商・産業政策や地域振興策の企画・立案に携わる。2000年より東京大学 社会情報研究所助教授、2009年より同大学 大学院 情報学環・学際情報学府教授。専門は、情報経済論、ネットワーク経済論。著書に『東日本大震災の科学』(東京大学出版会、分担著、2013年度土木学会出版文化賞受賞)、『地域づくりのコミュニケーション研究:まちの価値を創造するために』(ミネルヴァ書房、編著、2017年刊行)など。